抜毛症(ばつもうしょう)をご存じですか?
自分で髪の毛や眉毛などを引き抜いてしまう症状で、子どもや思春期の少女に多くみられますが、成人も発症します。
その原因と改善方法に迫ります。
抜毛症とは
抜毛症とは、精神的衝動や心理的ストレスにより、頭髪、眉毛、まつ毛などの体毛を自分で引き抜いてしまう癖のこと。
衝動制御障害(ICD)に分類される障害で、別名トリコチロマニア、抜毛癖とも呼ばれます。
本人が無意識のうちに髪の毛を抜いているような場合には、抜毛症ではなく円形脱毛症と勘違いしてしまうケースもあるそうです。
抜毛症はAGAなどと違って、遺伝的な要素や毛根自体に問題があったりするわけではないため、一般的な薄毛治療とは根本的に異なる治療が必要となります。
症状としては10歳前後の子供に多くみられるようで、発育や生活環境の変化などで治る場合もあるようですが、何かのきっかけが生じると再度髪の毛を抜くようになる可能性もあるそうです。
通常は一定の期間が経てば回復して元に戻るようですが、あまりにもひどい場合には、医師に相談するべきでしょう。
原因とメカニズムを知ろう
抜毛症は稀な病気ではありません。その発症率は大まかに0.6〜3.4%程度で、本人が両親の第一子であるケースが多いことがわかっています。
また、女性が男性の約9倍と大部分を占めていますが、女性は癖を隠したがる傾向が強いため、発症率が低く把握されている可能性も否めないそうです。
髪を抜く癖があると感じたら…
日常生活での困難(習い事、塾、対人関係など)による、心理的ストレスが原因で、20代までの若い世代、とくに10歳前後から思春期の女子によくみられる症状で、最初のうちは円形脱毛症など他の原因と見誤りやすいのが特徴。
多くは頭髪の一部を指でつまんで抜くため、脱毛部分は不規則な形をしています。
毛を食べてしまう毛食症を合併している場合もあり、成人でも発症します。
日常生活や心理的ストレスが原因で、学童期にはよくみられるそうです。
内向的な性格で、親や外に向けて発散できないため、その罰を自分に向けてしまうケースもあるとのこと。
最近では抜毛症は神経細胞と脳のコミュニケーションの一部に支障があるために起こるという説も有力ですが、原因ははっきりしていません。
特に子供のい場合は自分で抜いていることを自覚しているにも関わらず、親に対しては自分では抜いていないと言ってみたりするので、親が正確に把握しきれていないケースも多いそうです。
抜毛症の治療
抜毛症は通常の薄毛治療とは異なります。
心理療法で治療を行うため、精神科の専門治療が必要となります。
症状がそれほど重くない場合には、自分が自覚したり、生活環境の変化によって症状が改善するケースもあるそうですが、症状が重い場合には根本的な精神障害が改善しないと治すことができません。
いずれにせよ、精神科での長い目で見た治療も覚悟しなければならないかもしれません。
抜け毛症や強迫神経症との違い
脱毛症は、抜け毛症や脱毛症とは違うものです。
よく似た症状に「抜け毛症」がありますが、「け」が入るだけで全く違う状態です。
毛周期のターンが狂い、頭皮異常や髪の毛そのものに異常があるために、抜け毛が増えている症状で、育っていない、あるいは傷んだ髪の毛が抜けるため、自分で健康な髪を引き抜く行為による抜毛症とは大きな違いがあります。
抜け毛症の場合は毛周期が乱れ、退化期になる前に抜け毛になるため結果として薄毛となってしまい、その後も進行していきます。
抜け毛の進行速度はゆっくり抜けていったり、急速に抜けてしまったりと個人差があります。
原因は日頃の食事、人間関係や家庭、仕事上でのストレス、遺伝的要因、加齢、頭皮の炎症、薬の副作用などさまざまな要因が関連しあいながら起こります。
また、AGA(男性型脱毛症)、FAGA(女性男性型脱毛症)など、遺伝やホルモンの影響による脱毛症とは違い、自然治癒が可能です。
強迫神経症との類似点に注意
強迫神経症と比べると強迫観念は明確でなく、また、強迫行為自体も髪の毛を抜く行為に限定されていますが、気にしなくていいレベルではなく、放っておくと深刻化してしまいます。
強迫行為が髪の毛を抜くという行為に限られていたとしても、事態がひどくなれば生活の中でも影響が出てきます。
また、恋愛などをして異性の目が気になれば、抜毛癖も知られたくないという意識が芽生え、うまくいくはずの恋愛もうまくいかなかったりして、精神的に悪循環となります。
また、抜毛症では抜いた毛を口に入れてしまうことも多々あるようで、事態が深刻化すれば胃腸障害に発展してしまうこともあります。
改善方法と治療
心理的要因や不安が取り除かれることにより、多くは改善する場合が多いです。
1〜2本抜く程度なら心配は無用ですが、例えば数10分間以上抜き続けるような状態や、頭皮の一部の髪がはっきりとなくなるほどの状態は、何らかの改善が必要です。
無意識の場合も多いので、抜毛を指摘して改善が見られない場合は、心の病気として専門家に相談するのが望ましいでしょう。
また、精神科を受診して治療する必要もあります。
さらに、頭皮に異常が見られた場合には、皮膚科への受診も必要となるでしょう。
10代の頃に発症し、成人してからも悩まされているというケースもあるので、早めのケアが肝心です。
脱毛症とは違い、発毛を促すために必要な毛母細胞は残っていますので新しい髪は生えてきます。
いずれにせよ、身近にいる親が子供の様子をしっかりと観察し、相談に乗り、冷静な判断を下すことが求められます。
心理的要因からくる抜毛症は非常にデリケートな問題です。
ちょっとしたことで症状が悪化することもありますし、その逆で何かがきっかけで精神状態が良くなり、改善に向かうこともあるでしょう。精神科に相談するなど早期に対応することが重要です。